新規開拓営業は「相手の自己愛」の足し算 (小規模事業者向け)
今回は小規模事業者の新規開拓営業についてです。
営業職の方には当たり前のことだと思いますが、敢えて文章にしてみました。
さて、新規の契約を結ぶための営業を何かに例えるかとすれば、
広い砂場から金のかけらを探す「砂金集め」ではなく、
「積み木」ではないでしょうか。
何を積み上げるかというと、「相手の自己愛」です。
新規開拓営業は「信用を積み上げる」と言いたいところですが、契約も結ばぬうちに人様から信用をいただけるほど社会は甘くないので、「自己愛」としました。
新規開拓営業の進み度合いを以下のような段階で示すことができると思います。
これはあくまでも私の個人的な表現です。どこかで理論・体系化されたものではありませんのであしからず。
中小企業の BtoB を前提にしています。
相手にとって自分がどう思われているかを以下の7段階にまとめました。
1.知らない
2.敵ではない
3.味方になりそうだ
4.自分の利益に適う
5.取引の条件が合う ★このあたりから新規契約ができる
6.味方である
7.相手の力になりたい
上記の1.から7.の順に数字が上にいくほど関係が深く、営業の成果が大きいことになります。
今日明日の成果が欲しい私たちは、契約を焦るあまりにどうしても[4.]や[5.]をクリアすることに意識が集中してしまいます。
残念ながらそれではやっつけ仕事に終始します。
[3.味方になりそうだ] を経る前にこれを飛び越えて 費用対効果やメリットをアピールしても、実は営業の効率は悪いままです。
そんな状況で口に泡を溜めて必要性を説いても、ほとんど相手の耳に入っていません。
ですから、
夢のある自社の事業計画書を渡したり、「ベンチャーとして世界を変える」と宣言したり、お客様のオフィスビルの前で朝から出社を待ち構えたり、と必死になって取り組むことで[7.この人の力になってやりたい] と相手に思っていただければ、実は4.とか5.の細かな条件はそれほど重要ではない、ということになります。
こうやって今回のコラムを書きながら自分を振り返っても、新規の営業から良い取引や関係が築けたのは[7.相手の力になりたい] と思っていただいたときです。
自分自身や自社にそういった『チャームがある』 ということは新規開拓において重要なことのように思います。
この チャーム は自社における『大義名分』と言い替えても差し支えないです。
そのためにも
[2.敵ではない]
[3.味方になりそうだ]
の序盤の2つのステップは当然のようにクリアしている必要があります。
上場企業など知名度のある企業での営業であれば、この2つを経る必要もないかもしれません。
ただ、中小企業の BtoB ではここを乗り越えるのに大きな負担がかかります。
次に
お客様にとって [4.自分の利益に適う] [5.取引の条件が合う]
という2つの段階ももちろんクリアする必要があります。
この2つは、新規開拓営業の領域というよりも、自社の経営戦略に基づくターゲット選定・新規開拓方針・商品開発に関する領域なので、ここをどうするかの判断は営業部門の範疇にとどまらないかと思います。
あなたが経営者であれば、営業の現場にはこの方針を分かりやすく明確に示しておく必要があります。
新規開拓営業は、頭を下げて媚びへつらう必要はありません。
無理に価格を安くして利益を削る必要もありません。
すべきことは
『私はあなたの味方である』 『私は社会をより良くしたい』
という当たり前のことを可視化して相手に感じていただくこと。
それに尽きると思います。
具体的には、
昭和なやり方ですが、例えば、
誕生日にお祝いを申し上げる。
ご家族の喜ぶことをする。
幸せを一緒になって喜ぶ。
相手の幸せを祈る。
初めて会った記念日にお礼を申し上げる。
相手が悲しいときは話を聞く。
一緒になって明日を描く。
このようなことです。
新規開拓営業では、こうやって相手の「自己愛」を地道に満たしていくことが肝要かと思います。
適正な契約条件でこれらの積み重ねをコツコツ正しく行えば、おのずとどこかしらで新規の取引は生まれるはずです。
少し精神論・根性論に過ぎる文章となってしまいましたが、もちろん自社商品の市場性や価格競争力は当たり前に必要な要素です。
それ抜きに新規開拓が成り立つというわけではありませんのであしからず。
商売を7年半やってきて感じます。
新規開拓は相手の自己愛の足し算。
商売は信用の足し算。
私はそのように思いますが皆さんはいかがお考えでしょうか。
平成24年8月12日
吹上経理支援
日高 大輔