小企業・小規模事業者様に特化した営業譲渡・M&Aのご提案

 
小企業の営業譲渡の交渉時における相見積もり(あいみつ)について

2014年以前のお話です。

私が手がける税理士事務所様のM&Aの事例でこのようなことがありました。


日本国内の中部東海地方で税理士事務所さまの営業譲渡の仲介の交渉をしたときのことです。

その先生、売り手となるご高齢な個人事務所の所長先生は、私の想像よりもスムーズにお会いいただけました。

初めてお会いしたその日から、その事務所からみると県外にあたる税理士法人様との交渉を進めさせていただくこととなりました。



ところが、買い手希望の先生とのお引き合わせも済み譲渡条件の交渉が始まると、売り手のご高齢先生はにわかに

言動があやふやになってきました。

買い手の税理士法人と私も同席した3者での打ち合わせでも、売り手のご高齢先生は口ごもってしまいまともなお話にならず、

私たちは肩透かしにあった気分で事務所に戻る始末でした。

交渉中の買い手希望の代表先生との相性が芳しくないことも背景にあったように思います。



上のエピソードとは別の日にはこんな出来事もありました。

買い手の事務所様が譲渡対象の顧問先の業種や年商、顧問料などのおおまかなリスト(匿名)の開示を求めたため、

私が売り手先生のところへ赴き仲介者としてその旨やんわりとお願いをすると、

売り手の先生が目を剥いて、「拒否します」とおっしゃるのです。

すぐに冷静になられて、すみませんでした、とバツが悪そうになさったのですが、このときの光景は今でも目に焼きついています。

私の背後で事務作業をしておられた先生の奥様が不機嫌なご様子がこちらにも伝わってきました。


結局、このM&A交渉は売り手ではなく買い手の方からの断りの意向を受け、

ご高齢事務所様は私とは別ルートで交渉をしておられたと思われる同じ県内の事務所へ譲渡されました。



あくまでも私の個人的な印象ですが、

このご高齢の税理士先生は、ご自身の事務所の譲渡に際し、私から引き出す相見積もりによって、

よいよい条件を探っておられたのではないか、と私は当時を振り返ってそう考えています。

私と買い手希望の税理士法人代表は、ご高齢事務所様のM&Aの条件のダシにうまく使われたのかもしれません。



このように、小企業M&Aに際しての相見積もりは、相手から喜ばれることはありませんが、

譲渡を検討なさる社長にとっては必要なものだろう、と私は考えています。

逆に、買い手希望の企業の姿勢としては、自身が複数の交渉の中の1つに過ぎないという認識で、フラれる事を覚悟して

交渉に臨んだほうが精神的な負担は小さく済むかもしれません。

相手に万全の誠意は尽くしながらも、「ふっかけられたら交渉には応じませんよ」という心の余裕を持ちたいものです。



地方都市では特に見受けられるのが、営業譲渡・M&Aの相場の情報が少ないがゆえに、

交渉でチヤホヤされた売り手側の社長の気が大きくなってしまい、交渉における双方の条件が乖離して折り合いがつかなくなる事例です。

なので、売り手側こそいくつかの買い手の条件を知ることで、客観的な自身の市場価値を見定めてみることは大事なのだと思います。



末尾となりましたが、このエピソードではそもそも、売り手と買い手の相性があまりよろしくなかったのにもかかわらず

お引き合わせをしてしまった私が未熟で稚拙であったことも添えさせていただきます。



************************** まとめ *****************************

小企業M&Aにおいて、相見積もりは売り手にとって必要な場合もある

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2018年11月24日

吹上経理支援